【著名人に学ぶ!配偶者との死別の乗り越え方】高村光太郎

「智恵子抄」の高村光太郎

「智恵子抄」という詩集で有名な彫刻家であり詩人の高村光太郎をご存知でしょうか?今日は光太郎が妻の死をどう乗り越えたのかを書きたいと思います。

高村光太郎や智恵子抄については学校で学んだ人も多いと思います📖

光太郎の妻の智恵子は40代後半から現在で言う統合失調症を患い通常の会話のやり取りができない状態となり、その後肺結核で52歳で亡くなりました。光太郎は当時55歳。2人の間に子供はいません。また、生前智恵子は光太郎が長期間家を空けていた間に精神の不調によるものと思われる自殺未遂もしています。

光太郎自身、妻の精神の病を治したい一心で様々な文献を読み漁って調べたようですが、智恵子の家族に精神病を患った人もおらず、精神を病んだ明確な原因と言うものは分かっていませんが、発病前に智恵子の裕福だった実家の破産など心労もあったようです。

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智恵子抄に見る智恵子への愛、病気、死、そして死後

智恵子抄には、智恵子に出会った頃からの智恵子に関する詩が集められています。智恵子への愛や、二人の強い絆を感じる素晴らしい詩が沢山あります💝

どの詩も素敵ですが、特に「人類の泉」「値いがたき智恵子」「レモン哀歌」「案内」が好きです。智恵子への愛、病気、死、そして死後について表現されています。一部私の好きな部分を抜粋してご紹介します。

「人類の泉 (抜粋)」~智恵子への愛

(芸術家として孤独に自分の道を歩む中での光太郎)

私にはあなたがある

あなたがある

そしてあなたの内には大きな愛の世界があります

私は人から離れて孤独になりながら

あなたを通じて再び人類の生きた気息に接します

ヒユウマニテイの中に活躍します

すべてから脱却して

ただあなたに向ふのです

深いとほい人類の泉に肌をひたすのです

「値(あ)いがたき智恵子 (抜粋)」~精神を病んだ智恵子

智恵子は現身(うつしみ)のわたしを見ず、

わたしのうしろのわたしに焦がれる。

智恵子はくるしみの重さを今はすてて、

限りない荒漠の美意識圏にさまよひ出た。

私を呼ぶ声をしきりにきくが、

智恵子はもう人間界の切符を持たない。

「レモン哀歌(全文)」~智恵子の死

(結核で智恵子が亡くなる日に光太郎はレモンを智恵子に渡した)

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた

かなしく白くあかるい死の床で

わたしの手からとつた一つのレモンを

あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ

トパアズいろの香気が立つ

その数滴の天のものなるレモンの汁は

ぱつとあなたの意識を正常にした

あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ

わたしの手を握るあなたの力の健康さよ

あなたの咽頭(のど)に嵐はあるが

かういふ命の瀬戸ぎはに

智恵子はもとの智恵子となり

生涯の愛を一瞬にかたむけた

それからひと時

昔山巓(さんてん)でしたやうな深呼吸を一つして

あなたの機関はそれなり止まつた

写真の前に挿した桜の花かげに

すずしく光るレモンを今日も置かう

お皿の上に切り分けられたレモン

「案内(抜粋)」~智恵子の死後

(智恵子の死後、第二次世界大戦中に光太郎が疎開した岩手県花巻市の家の案内)

三畳あれば寝られますね。

これが水屋。

これが井戸。

(省略)

あの霞んでゐる突きあたりの辺が

金華山沖といふことでせう。

智恵さん気に入りましたか、好きですか。

うしろの山つづきが毒が森。

そこにはカモシカも来るし熊も出ます。

智恵さん斯(か)ういふところ好きでせう。

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光太郎が死別を乗り越えるきっかけとなった気付き

芸術活動すらやる気がなくなる

光太郎は智恵子が亡くなったことについて「智恵子の死による精神的打撃は実に烈(はげ)しく、一時は自己の芸術的製作さへ其(そ)の目標 を失ったやうな空虚感にとりつかれた幾箇月かを過した」(「智恵子抄」)と書いています。

光太郎は自分の作った作品を子供のように熱愛してくれた智恵子亡き後、作品を製作する気になれない空虚な時を過ごしました。

ある気付きにより再び意欲を取り戻す

しかしそれからある時光太郎はある気付きを体験します。

「さういふ(作りたいものがあっても作る気になれないという)幾箇月の苦闘の後、或る偶然の事から満月の夜に、智恵子はその個的存在を失ふ事によつて却(かえり)て私にとつては普遍的存在となつたのである事を痛感し、それ以来智恵子の息吹を常に身近かに感ずる事が出来、言はば彼女は私とともにある者となり、私にとつての永遠なるものであるといふ実感の方が強くなつた。私はさうして平静と心の健康とを取り戻し仕事の張合がもう一度出て来た。一日の仕事を終つて製作を眺める時「どうだらう」といつて後ろをふりむけば智恵子はきつと其処に居る。彼女は何処(どこ)にでも居るのである。」(「智恵子抄」)

光太郎はある時何かのきっかけによって智恵子は死によって永遠に消え去ってしまったのではなく、むしろ普遍的存在として常に光太郎の近くにいる、振り向けば彼女はどこにでも居るのだという気付きを体験することによって心の健康を取り戻し、再び芸術活動へのやる気を取り戻しました。

スピリチュアルな気付きが死別の苦しみを溶かす

スピリチュアルな気付きとは理由なく自分の中で腑に落ちること

この気付きというのは、言葉で理論的に説明できるようなものではなくスピリチュアル(霊的)なレベルでそうだと腑に落ちるという事です。

このような気付きこそが大切な人の死を乗り越える大きなきっかけとなります。なぜ人は死ぬのか、死んだらどこへ行くのか、という科学では答えられない問いに対しては、自分なりの気付きを体験することで自ずとその問いへの自分だけの答えが分かります。そしてそのような体験によって光太郎のようにあれほど愛した智恵子の死でさえも乗り越えることができるのです。

女性のハートからピンク色の光のオーラが漂い女性を包んでいる

科学、心理学、医学、宗教、哲学など、外の世界の言葉の中に答えがあるわけではありません。それらがきっかけを与えてくれることはあるかもしれませんが、大切な人はどこへ行ったのか、その答えは自分の中にあります。自分自身が「あぁそうか。」と腑に落ちるという体験とともにやってくる気付きが答えです。

▶グリーフケアではスピリチュアルケアというものが医療機関でも重要視されています!詳しくはこちら→グリーフケアとスピリチュアル~WHOも認めたスピリチュアルの重要性

ネガティブな感情を手放すと気付きが起こる

ではどうやったら自分だけの気付きを得られるのでしょうか

それにはやはり今自分が持っているあらゆる植え付けられた観念がもたらす現実への抵抗感をどんどん手放して行くことが必要です。

▶呼吸のワークはこちら→【死別の苦しみを手放す!】簡単・呼吸のワーク★効果絶大3ステップ

視点が変わるような気付きというのは、植え付けられた思考から自由にならなければ到達できないというのは何となくわかると思います。湧いてくるネガティブな思考を信じて惑わされる事によって自然体の自分(本質の自分)が隠れてしまっているからです。

このため、余計な思考に惑わされなくなってくると、自然体の本質の自分自身が現れて自然と気付きがやって来ます。大切な人はいつも側にいるのだという温かさや安心感を実感として感じられるようになります。